大判例

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東京地方裁判所 昭和40年(手ワ)1071号 判決

原告 株式会社森脇文庫

右代表者代表取締役 森脇将光

右訴訟代理人弁護士 秋知和憲

被告 株式会社白子清次郎商店

右代表者代表取締役 長谷川喜永

右訴訟代理人弁護士 金沢善一

二、主文

1、被告は原告に対し三、三五三、五〇〇円及びこれに対する昭和三七年八月七日から、完済までの年六分の金員を支払わなければならない。

2、訴訟費用は被告の負担とする。

3、この判決は仮に執行することができる。

三、事実

1、原告の請求の趣旨は主文第一、第二項と同旨の判決及び仮執行の宣言を求めることで、請求の原因及び被告の抗弁に対する主張は別紙中のその記載のとおりである。

2、被告の答弁及び主張は別紙中のその記載のとおりである。

3、証拠関係 ≪省略≫

四、理由

1、原告主張の本件各手形が被告によって振り出され、それに原告主張のとおりの裏書欄記載があることは当事者間に争いがない。

そして、右各手形の最終の裏書人を除く花輪欣之助までの裏書の連続を疑うことのできる証拠はない。

しかし、同各手形の最終裏書人である松本文男は架空人であって、原告の便宜上の銀行口座名であり、原告はその名義で本件各手形を取得し現にこれを所持するとするのが原告の主張であるが、被告はこれを争うので、まず、この点について判断するのに、≪証拠省略≫によれば、原告の右主張が認められる。そうすれば、たとえ、松本文男なる者が実在せず、その最終裏書人としての署名捺印が現に抹消してなくとも、その被裏書人欄はいずれも白地のままである以上、原告が現に正当な本件各手形の所持人であるとするの外はない。

2、被告は、法人である原告が自然人の名称をもって手形を取得することは許されないと主張するが、そのような場合、その手形取得を無効とする法理はない。

もとより、原告が松本文男なる者から本件各手形を取得したものでもないから、そのことを前提としてことを考える必要はなくその前提にたつ被告の主張を判断するまでもない。

また、本件各手形の取得者は森脇将光個人であって、その代表する法人としての原告ではないと、被告は主張し、証人山口静一郎の証言でも右個人と法人との区別を明確にしていないきらいはあるが、前出甲第一〇号証及び成立に争いのない甲第一ないし第四号証本件各手形の手形交換所持出銀行印によれば、本件各手形が法人としての原告の取得となったことが認められる。

3、次に、原告は害意のある取得者であるとの被告の主張についてみるのに、≪証拠省略≫を綜合すれば、原告が入手した確認書中、手形授受の原因関係に不審な点もあり、原告の割引金交付額にも通常の手形割引にみられない高利の天引があったことが認められ、金融業者としての原告代表者またはその従業員が果して本件各手形を確認書に記載されたとおりの商業手形であると信じたか否か疑わしいけれども、ともかくも被告会社が本件各手形が商業手形であることの確認書を出したこと自体からしても、また、証人三井孝之の証言からしても被告会社が真実融通手形として受取人の訴外三洋産業株式会社のために金融を得しめる目的で本件各手形を振り出したことは認められるのであって、そのように他に金融を得しめる目的で手形を振り出し、それが転々して金融業者によって割り引かれた以上、その業者がたとえ融通手形と知ってその割引をなし、割引において高利を天引し、ときにその一部を別途債権の弁済に充てるようなことがあったとしても、そのことで、右業者に害意があったとはいえず、融通手形は結局その目的を果したことになるのである。本件各手形についても右の理はあてはまるものであって、被告は本件各手形について原告に対し原告に害意があったとして支払を拒みえず、同手形によって信用を与えられた者との間にその後の利害の調節をするの外はないというべきである。

原告の本件各手形による権利の実行がおくれていることは、これを以上の諸事実と併せ考えてもなお、原告に害意があることの証左となしえない。原告が架空人名義を用いて本件各手形を取得したことの事情または動機は本件でおくそくすべきかぎりではなく、その動機等によっては別途の公的措置がありうるのみである。

4、以上のとおりであるから、原告の本訴請求を認容し、民事訴訟法第八九条及び第一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(判事 畔上英治)

<以下省略>

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